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彩層の磁場

NLFFF 外挿はプラズマβが小さいことを前提としている。しかし、この仮定は境界条件を与える光球では成り立たない。そのため、より上空、すなわち彩層において磁場を直接測定することが重要となる。これは光球からの外挿の信頼性を検証するためにも、また磁気リコネクションが実際に起きている場所を観測するためにも必要な測定である。

光球からの外挿はどこまで信頼できるか

2つの活動領域について、He I 10830 Å の偏光分光観測から彩層磁場を測定し、光球から外挿したポテンシャル磁場および NLFFF と比較した。この比較によって、光球からの外挿がもつ不確かさを定量的に見積もることができる。

観測された彩層磁場は、光球磁場よりも非ポテンシャル性が大きくなりうることが明らかになった。そして、彩層高度におけるこの大きな非ポテンシャル性は、光球磁場からの NLFFF 外挿では再現されない。場所によっては、シア角にして30〜40度もの過小評価となる。この差は、光球がフォースフリーでないことに起因すると考えられる。コロナの外挿精度を改善するには、実測された彩層磁場を NLFFF モデリングに取り込む必要があるというのが、本研究の結論である。

→ Y. Kawabata, A. Asensio Ramos, S. Inoue, and T. Shimizu, The Astrophysical Journal, 898, 32, 2020

磁気リコネクションの発生高度を診断する

下層大気での磁気リコネクションは、エラーマンボムや UV バーストといった彩層現象を駆動している。大気がどのように加熱されるかは電離度とプラズマβに強く依存し、これらは高度とともに変化する。したがって、リコネクションがどの高度で起きているかを診断することが不可欠である。

多波長偏光分光観測によってこれが可能かを検証するため、異なる高度で起きる2つのリコネクション領域を含む現実的な磁気流体シミュレーションから、ストークスプロファイルを合成した。低高度でリコネクションが起きる場合、双方向のリコネクション流に由来する赤方偏移成分と青方偏移成分の両方が、光球線である Fe I 8468 Å と K I 7664/7698 Å に現れる。一方、高高度で起きる場合は、彩層線である Ca II 8498/8542 Å が、その形成層の上部で生じる加熱によって輝線を示す。近赤外の多波長偏光分光観測によって、リコネクションの発生高度を区別できると考えられる。

→ Y. Kawabata, C. Quintero Noda, Y. Katsukawa, M. Kubo, T. Matsumoto, and T. Oba, The Astrophysical Journal, 960, 26, 2024

エラーマンボムの3次元構造を分解する

上記の予測を、実際の観測で検証した。口径1mの気球望遠鏡 SUNRISE III に搭載された近赤外偏光分光装置 SCIP (Sunrise Chromospheric Infrared spectroPolarimeter) を用いて、浮上磁場領域を観測した。大気の大部分より上空に位置するため、この望遠鏡はシーイングの影響を受けない高空間分解能のデータを提供し、SCIP は光球から下部彩層までを切れ目なくカバーする多波長偏光分光を実現する。

光球線である Fe I 線と K I 線、および彩層線である Ca II 線の多波長ストークスプロファイルを解析し、K I 線と Ca II 線に弱磁場近似を適用して3次元磁場構造を再構成した。Ca II 8542 Å 線の青翼と赤翼の増光は空間的にずれた位置に現れており、双方向のリコネクション流の存在を示している。

再構成された3次元磁場から、解析した2つのイベントにおいて、逆極性の磁場構造が到達する高度が異なることが明らかになった。一方のイベントでは磁場構造が低層に閉じ込められており、Ca II 8542 Å 線の線コア形成高度には達しておらず、線コア強度の増加も見られない。もう一方のイベントでは Ca II 8542 Å 線の線コア形成高度まで達しており、線コア強度の増大も観測された。これは、リコネクション電流シートが到達する高度が異なることを表していると解釈される。

→ Y. Kawabata et al., The Astrophysical Journal Letters, 1007, L39, 2026

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